施政方針並びに施策の大綱
令和7年度 施政方針並びに施策の大綱(PDF 468KB)
国は、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」におきまして、「日本経済・地方経済の成長」、「物価高の克服」、「国民の安心・安全の確保」を3つの柱とし、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への移行を目指すとし、物価高騰が長引くものの、それを上回る賃金上昇を見込み、景気は緩やかに持ち直す回復基調にあると予測しております。
また、石破内閣は地方創生の政策として、「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生」、「東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散」、「付加価値創出型の新しい地方経済の創生」、「デジタル・新技術の徹底活用」、「産官学金労言士の連携など国民的な機運の向上」の5つを基本構想とした「地方創生2.0」を掲げ、令和7年夏には、今後10年間集中的に取り組む基本構想を策定する予定としております。
本町は、令和6年度に「第3期岩美町地域創生総合戦略」を策定し、人口減少・少子高齢化対策を目的とした取組を行っているところですが、国が示す新たな視点も踏まえながら、次期総合戦略を策定し、まちづくりに取り組みたいと考えております。
令和7年度の町政を進めるにあたり、課題ごとの施策の大綱について申し上げます。
〇防災・減災対策について
昨年、8月に日向灘で地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報」が制度運用後初めて発表されました。また、全国各地で大雨特別警報が発表され、水害や土砂災害が発生するなど、大規模な自然災害が頻発しております。自然災害への備えとしまして、避難所でも健康で安心して過ごしていただけるよう、簡易トイレやトイレ用テントなど、衛生面の維持やプライバシーの保護等に必要となる物資の整備を進めます。
住宅の耐震対策につきましては、町民の皆様自身の備えとして、新たに、耐震性の低い住宅の建て替えに対して支援を行いますとともに、耐震診断や耐震改修等への助成を拡充します。
また、空家対策につきましては、所有者や相続人に対し、町の支援制度の活用を促しながら適切に処置するよう指導や勧告を行うとともに、現場の状況を踏まえ、放置されたままの危険な状態である特定空家の除却も検討します。
○教育について
小・中学校では、これからの時代を担う子どもたちに、国際共通語である英語に慣れ親しむ環境をさらに充実させるため、外国語指導助手(ALT)を小・中学校に各校2名ずつ配置します。また、保育所への訪問などにより、幼児期から自然に英語と触れ合い親しみながら学べる環境を充実させ、小・中学校に繋がる英語教育に取り組みます。
小・中学校の暑さ・寒さ対策につきましては、新たに、特別教室への空調整備と既存設備の更新に着手しますとともに、避難所である小学校の屋内運動場につきましても、空調整備を検討します。
中学校部活動につきましては、少子化により部活動の維持が困難となっている状況や教員による指導・引率等の負担といった課題を踏まえ、休日の地域連携・地域移行を進めるため、スポーツ・文化団体との調整や指導者の確保等、連携・移行に向けた具体的な準備に取り組みます。
本年度は、「いわみ虹色プラン~岩美町男女共同参画計画~」が最終年度となります。計画に沿った実施と検証を行い、次期計画の策定を進め、男女共同参画社会のさらなる実現に取り組みます。
また、私たち一人ひとりが安心して幸福を追求する権利である人権が尊重されるまちとなるよう、人権問題に関する啓発活動を行うとともに、差別禁止を盛り込んだ、「岩美町あらゆる差別の解消及び人権擁護に関する条例」を制定し、国、県及び関係団体と連携しながら、差別のない明るい町づくりを推進します。
○子育て支援について
本年度は、新たに策定する「岩美町こども・若者未来計画」の初年度となります。こども・若者の意見を取り入れ、「こどもまんなか」の基本理念のもと、着実に教育・保育の体制整備や子育て支援等の施策を実施します。
子育ての拠点として、「子育て支援センター」や「遊びの広場」と一体的な利用が可能であり、雨天時でも室内で子どもが自由に遊べる「児童センター(仮称)」の整備に着手します。
保育所におきましては、3歳児以上のご飯を無償提供するための体制整備を進め、秋ごろからの実施を目指します。町内のお米を使った完全給食により、保護者の皆様の負担軽減と地域経済の振興を図ります。
また、保育所、放課後児童クラブにおける待機児童「ゼロ」、乳児用おむつ購入費助成など、こどもを安心して産み育てることができるよう、切れ目のない子育て支援施策・子育て環境の充実に取り組みます。
○移住定住・住環境対策について
移住・定住対策として実施している新築・リフォーム助成につきましては、町内事業者が施工する新築助成額を拡充し、住宅の整備に対する支援の充実と町内経済の活性化を図るとともに、引き続き、Uターンで岩美町に帰ってこられた若者世帯に対する奨励金の支給や、移住に対する空き家改修費の支援を行います。
また、町内に空き家を所有しておられ、町外にお住まいの方に対し、「住まいのエンディングノート」を配布し、空き家の利活用等を考えていただくきっかけをつくるとともに、空き家活用情報システムを案内し、登録物件数の増加に取り組みます。
防犯対策につきましては、全国的に住居侵入や強盗などの犯罪が頻発していることを踏まえ、被害に遭わないようにするため、60歳以上の方がお住いの世帯に、防犯機器の購入に対する支援を行います。
〇観光振興について
昨年、山陰海岸ジオパークは、関係者の方々のご尽力により、ユネスコ世界ジオパークネットワークの再認定を受けました。
本年度は、景観維持に注力するほか、新たに、岩井温泉とグルメを組み合わせたウォーキングイベントの開催を支援するとともに、引き続き、山陰海岸ジオパーク推進協議会をはじめとする関係機関と連携し、ジオパークのPRや利活用、保護保全に努めます。
4月には大阪・関西万博が開催され、鳥取県の豊かな自然・食・文化など様々な魅力を実際に体験できる展示やイベントとして「とっとリアル・パビリオン」が設置されます。本町も万博会場へ出向き観光PRや誘客を図るイベント等を計画しております。
また、万博を契機に、インバウンド(外国人観光客)の増加が見込まれます。岩美町観光協会、県及び麒麟のまち圏域の市町と連携し、誘客促進イベントの開催や広域的な周遊ルートの提供を行います。5月には町内初となるアニメ「Free!」公式声優イベントが開催されます。イベントに合わせ、周遊バスツアーや着ぐるみ撮影会、グルメ屋台なども企画されており、町外から多くのファンの来町が期待されております。イベント後におきましても、年間を通じて岩美町を楽しんでいただけるよう、アニメを活用した町営バスのラッピングやスタンプラリーなどを実施します。
〇商工業振興について
本年度は、新たな事業展開や省エネ、省力化など、小規模事業者の事業継続の支援を拡充します。
また、昨年末に実施した事業所調査におきまして、事業承継を検討されている事業所につきましては「鳥取県事業承継引き継ぎ支援センター」へつないだところであり、引き続き、関係機関と連携して事業承継を支援します。
岩美町商工会が中心となって検討・実践している岩美駅周辺の賑わいづくりにつきましては、自発的なイベント等を通じて地域の人材を掘り起こすとともに、地域おこし協力隊制度を活用して外部から起業人材を募集し、岩美駅周辺の活性化に向けた土台づくりを進めます。
○医療・健康対策について
岩美病院は、保健・介護・福祉と連携した「地域包括ケアシステム」の中心的役割を果たし、町民の皆様の医療ニーズの把握に努め、長寿と健康と生活を支えていくことが責務であると考えております。
本年2月より整形外科医師を1名増員し、診療体制を強化しましたが、引き続き、医師・看護師・薬剤師等の人材の確保に努めますとともに、経営強化プランで掲げた目標の達成に向け、経営の効率化を図ります。
健康対策につきましては、日常生活の中での見えづらさ、聞こえづらさの、サポートにつなげていくため、人間ドック検査項目に視覚検査及び聴覚検査を追加しますとともに、緑内障の早期発見につなげるため、検診の対象年齢を50歳以上の方に拡充します。
また、新型コロナワクチンと帯状疱疹ワクチンが定期予防接種となり自己負担が必要となりますが、一部助成により負担を軽減します。
○福祉について
だれもが安心して暮らせる社会を実現するため、新たに策定した、「第5期地域福祉計画」に沿って、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるよう、支え合いのできる「地域共生社会」の実現を目指します。
団塊の世代が後期高齢者に到達する2025年を迎え、全国的に高齢化が進展し、独居高齢者世帯が増えることが想定されております。安心して地域で暮らしていただくため、見守り機能のあるAI機器等の補助制度創設に向けて機能や有効性の検証を行います。
また、各地区公民館にeスポーツ等の機器を整備し、地域の子どもとの交流を図るなど楽しい社会参加を促し、認知症予防やフレイル予防に取り組みます。
〇農業振興について
農業を取り巻く情勢は、農業者の高齢化や後継者不足による担い手の減少やイノシシ、シカ等による農作物被害、肥料価格の高騰などによる生産コストの上昇が続いており依然として厳しい状況にあります。担い手確保対策として、農業関連の業務を行う地域おこし協力隊員を募るとともに、新規就農者や農業法人等での新たな後継者の確保や新規雇用に対する支援を行います。
農地の保全につきましては、農地を維持していくための「多面的機能支払交付金」を活用しますとともに、令和7年度から始まる「中山間地域等直接支払事業」の第6期対策に取り組み、地域での農地保全対策を支援します。
有害鳥獣対策につきましては、令和6年度に整備した鳥獣一時冷凍保管施設の利用を促進し、ペットフード加工施設への運搬、処分の円滑な実施により、捕獲者の労力軽減及び捕獲鳥獣の有効利用を図るとともに、捕獲奨励金の交付による有害鳥獣の捕獲促進や被害防止柵の設置支援による被害防止対策などを行います。
〇林業振興について
全国的に担い手不足や所有者不明森林等の問題により、森林の適切な管理が課題となっており、森林機能が十分に発揮されていない状況にあります。
森林環境譲与税を財源として、森林経営管理制度に係る取組を実施するとともに、放置竹林の解消に向けた竹林整備事業や花粉発生源対策、皆伐再造林等に林業経営体や関係機関と連携して取り組みます。
〇水産業振興について
水産業を取り巻く環境は、漁業者の担い手不足に加え、海水温の変化等による水産資源の減少などにより、依然として厳しい状況にあります。
漁業就業者の確保対策として、新規就業者支援を行うとともに、水産物の安定供給を図るため、稚貝稚魚の放流、藻場の管理等に対する支援を継続的に行い、持続可能な水産業の振興に努めます。
また、地域資源の価値や魅力を活用する海業に対する支援を実施し、新たな地域のにぎわいを創出することで、交流人口の増加や水産業の振興を中心とした地域活性化に取り組みます。
○道路整備について
岩美道路が全線開通し、周辺では宅地及び商業施設の開発が進み、今後のさらなる定住促進や交流人口の増加に繋がることが期待されます。
県道整備につきましては、網代港岩美停車場線における田後地内の橋梁新設工事が進められており、通行の利便性が向上します。
町道整備は、落石の影響により一部区間を全面通行止めにしております、町道陸上中央線の早期復旧に向けた工事着手を予定しております。
また、山ノ神橋ほか6橋の橋梁補修工事や、児童センター(仮称)アクセス道路の新設工事などを予定しており、安全で快適な道路環境の整備に取り組みます。
○公共交通について
公共交通は、全国的に自家用車の普及や人口減少による利用者の減少に加え、ドライバー不足の深刻化により運行形態や規模の見直しが進められています。
町営バスにつきましては、1乗車100円とする運賃均一化や一部予約運行の導入などを進めましたが、利用状況や利用者の声を基に、予約受付時間の延長や学生の下校に合わせた運行に見直すとともに、利便性の向上や運行の効率化に向けた検討を行います。
公共交通の利用促進につきましては、引き続き、民間路線バスの定期券・回数券の購入助成や町内の学校や老人クラブのJRを利用した活動を推進するとともに、県内の関係団体が連携して進める、民間路線バスへの「ICOCA」の導入に対して支援をします。
○上・下水道事業について
令和5年度から事業を進めております池谷浄水場更新工事は本年度内の供用開始に向けた施設整備を進めます。
また、国道178号浦富地内配水管布設工事及び県道改良工事に伴う田後地内配水管移設工事を予定しており、安全で安心な水道水を安定して供給するため、施設更新及び管路の耐震化を計画的に進めます。
下水道事業につきましては、第1期ストックマネジメント計画に基づいた機械・設備更新が最終年度を迎え、次期計画であります、令和8年度以降のストックマネジメント計画を策定し、施設の長寿命化及び財政負担の平準化に取り組み、持続的で安定した下水道経営を目指します。
○環境対策について
温室効果ガスの排出を実質ゼロとするため、脱炭素社会の実現に向けた取組みを加速していく必要があります。
本年度、策定する「岩美町地球温暖化対策実行計画」に定める、温室効果ガスの削減目標や再生可能エネルギーの目標達成に向けて、「ゼロカーボンシティー」を宣言し、地域が一体となって取り組む体制を整えます。
また、環境にやさしい再生可能エネルギーの導入を促進するため、自家用太陽光発電設備や蓄電池の導入を支援しますとともに、宅配便の再配達による温室効果ガスを抑制するための支援を行います。
〇行財政運営について
情報通信技術の効果的な活用による町民の皆様の利便性の向上と、持続可能な行政運営の確立を目的として、本町の情報システムを国が定める統一的な基準に適合した標準準拠システムへ移行します。円滑な移行ができるよう、関係機関との連携を図りながらガバメントクラウド上でのシステム稼働に向けた準備を進めます。
また、LINE公式アカウントをはじめ、SNSを活用した情報発信につきましては、いち早く町民の皆様へ情報を届けることのできる手段として更なる活用を進めます。
財政運営では、物価の上昇や、社会保障費の増額により、今後の見通しが不透明な状況であります。
補助制度の有効活用や費用対効果の更なる向上に努め、町の未来を担う子ども達に過度な負担を強いることがないよう、持続可能な行財政運営に取り組みます。