施政方針並びに施策の大綱

 
 
 令和6年度 施政方針並びに施策の大綱(PDF 468KB)

 

 ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの紛争など不安定な国際情勢に よ る 輸入原材料価格の上昇や円安により物価高が続き、日々の生活や経済活動に大きな影響を及ぼしております。

 政府は、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月2日閣議決定)において、「物価高から国民生活を守

る」、「地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長の実現」、「成長力の強化・高度化に資する国内投資促進」、「人口減少を乗り越え変化を力にする社会改革の起動・推進」、「国土強靭化、防災・減災など国民の安全・安心の確保」を5本の柱とし、日本経済の再生に向け 、 低所得世帯等への給付金や所得税の減税など により個人消費や企業投資を後押しすることとしております。

 本町におきましては、コロナ禍前の生活に戻りつつありますが 、まだ 完全収束とは言い難い状況であ り、人口減少・少子高
齢化の対応、 物価高騰による町民生活・事業活動への影響の緩和を 図って いく必要があります。
 本年は岩美町制施行70周年の節目の年でございます。 記念式典のほか記念事業を開催し、町政の振興、文化の向上など本
町の発展にご 尽力いただいた方々の功績を讃えるとともに、町民の皆様と70周年をお祝 し 、更なる町勢進展に繋げてまいりたいと考えます 。

 令和6年度の町政を進めるにあたり、課題ごとの施策の大綱について申し上げます。


〇防災・減災対策について

 昨年は、7月の豪雨や台風7号により県内で大きな被害が発生しております。また、本年1月1日に石川県能登半島で発生
した地震では、住宅の倒壊などにより多くの尊い命が奪われ、今なお日常生活へ大きな影響がでております。地震発生時には、
町内でも地震や津波の到達が観測されており、改めて災害発生に対する備えが重要であると認識を強めたところであり、より地域の実情に沿った 防災計画とすべく必要な見直しを進めます。

 災害に対する備えとしまして、住宅の耐震改修、耐震シェルター整備への支援を拡充するとともに、新たに居室単位での耐震改修や耐震ベッドの整備に対して支援を行います。

 また、迅速な避難行動が行われるよう自主防災組織に対し奨励金を交付し、定期的な訓練の実施を促すとともに、引き続き要配慮者の確認や避難計画の作成・更新を促進し、地域における防災力や共助の仕組みが強化されるよう取り組んでまいります。 

 特定空家対策では、所有者や相続人を迅速に特定し助言・指導等の措置を行うほか、解体に要する経費の一部支 援や除却に取り組んでまいります。


○子育て支援について
 妊産婦、子育て世帯、子どもに対して一体的な支援を行う「こども家庭センター」を新たに設置し、虐待への予防的な対応から個々の家庭状況に応じた切れ目のない支援を保健師・助産師などの専門職員と関係機関が連携して行います。

 保育所におきましては、 スマートフォンやタブレットを活用した保護者の皆様との情報共有システムを導入します。児童の登降所状況をシステム管理することで安全性の向上を図るとともに、双方向の連絡機能により保護者の利便性向上や、保育業務のデジタル化により、子どもと向き合う時間をより多く確保し、保育の質の向上に繋げてまいります。

 子育て世帯の経済的負担の更なる軽減と安心して必要な医療が受けられるよう、18歳までの子どもの医療費を無償化するとともに、支援が必要なひとり親家庭の養育者の医療費の無償化を継続するほか、子どもの屋内の遊び場整備を検討します。

 また、「第2期岩美町子ども・子育て支援事業計画」が最終年度となります。計画に沿った子育て支援施策の実施と検証を行度となります。計画に沿った子育て支援施策の実施と検証を行い、多様化するニーズを的確に捉え、令和7年度からの第3期計画の策定を進め、次代を担う子どもたちの健やかな成長と子育て育て家庭の支援家庭の支援に取り組みます。


○教育について
 小・中学校では、これからの時代を担う子どもたちがグローバル化に対応した人材となることの一助とするため、外国語指導導者者(ALT)を各小学校各に配置するとともに、ALTコーディネーターを配置し、効果的な英語教育に取り組みます。

 岩美高校との連携では、県外等から入学する生徒が利用する学生寮の運営と整備に対する支援を行い、入学希望者の増加に繋げます繋げます。

 町の代表的スポーツイベントである浦富海岸健康マラソン大会は、コロナ禍前と同規模で開催します。また、2028オリンピックロサンゼルス大会から正式競技となる、海を舞台とした新しいボート競技であります「コースタルローイング」の大会を町内に招致し、本町を新しいマリンスポーツの拠点として全国にPRします。

 人権教育につきましては、部落差別をはじめさまざまな人権問題の解決を図るため、各地区人権教育推進会等の活動支援や講演会・講座の開催を通じ、町民一人一人が人権について自らの問題として考え、正しく理解できるよう、意識改革に取り組みます。男女共同参画推進については、町内企業等の管理職の女性に視点を当て、働き方そのものの課題や悩みを共有できる交流の場交流の場や男性の家事・育児参加をテーマにした講演会を開催し、実践促進を図ります。


○移住定住・住環境対策について

 本年は、 人口減少対策を取りまとめた「第2期岩美町地域創生総合戦略」の最終年度を迎えます。年度毎の目標人口は概ね
達成しておりますが人口減少は続いております 。これまで実施した施策の効果を検証し、新たに策定する第3期戦略により更

なる人口減少の抑制に努めてまいります。新たに、住まいの確保に係る若者世帯の経済的負担の軽減とて、 新婚の若者世帯に対する住宅新築・リフォーム助成を拡充するとともに、Uターン奨励金や家賃助成を継続 し、若者の移住定住の促進により 、活力ある地域づくりに取り組んでまいります。

 また、東京圏から移住し、起業や就業をされる方に対する支援として、移住支援金の制度を新設いたします。

 町営住宅につきましては、経年による老朽化が進むなか、計画的に更新や改修を行い施設の長寿命化を図ってまいります。 

 本年度は、浦富地区を中心とした町営住宅につきまして、建設、維持管理等を民間の資金、技術力を活用して行うPFIの

手法による集約建替を検討します。


〇観光振興について
 2022年の審査で2年間の条件付き再認定となった山陰海岸ジオパークの再認定審査が本年度実施されます。関係機関と
連携を密にし、再認定に向けて取り組んでまいります。

 あわせまして、先人から引き継がれた美しい景観や貴重な地質遺産を保護保全しながら活用するため、平成22年度に策定した浦富海岸保存管理計画の見直しや唐川のカキツバタ保存活用計画の策定に着手します。

 また、2025年開催の大阪関西万博を契機に増加を見込むインバウンドの対応として、町営バスへの日本語と英語による
車内用音声案内装置の導入や町営バス路線案内図を多言語化するほか、観光パンフレットの多言語化支援、民間事業者によるインバウンド誘致活動に対する助成を行います。

 さらに、アニメのロケ参考地となっている町内の各スポットなどを周遊するデジタルスタンプラリーやその原風景をAR技術で再現するなどデジタル技術を活用した取組を支援し、誘客に繋げてまいります。

 コロナ禍からの脱却が進み、観光需要の高まりやインバウンナ禍が回復基調のなか、持続可能な魅力ある観光地を目指してて岩美町観光協会やDMO麒麟のまち観光局などと連携し、受け入れ態勢の整備やSNSを活用した効果的な情報発信に取り組みます。

〇商工業振興について
  エネルギー価格をはじめとする物価高や生産性向上・賃上げへの対応に加え、深刻な人手不足など事業者にとって厳しい状況が依然続いております。
 このような状況においても、新規創業に関する相談は増加傾向にあります。事業継続や事業承継の取組と併せて地域に根付く事業にチャレンジされる方を引き続き支援するとともに、地元人材の雇用に対する支援を継続します。

 ふるさと納税は、町の自主財源を確保するだけでなく、返礼品の提供に伴う経済効果や町の施策を応援していただくことよる関係人口の増加などが期待できます。
 近年、寄附額が伸び悩んでいる状況において、地域おこし協力隊の活用に加え、特産品やその流通についても熟知している道の駅「きなんせ岩美」を中心として、ふるさと納税を推進する体制を構築してまいります。
 本町の特産品や各種サービス、体験観光等を売り出す好機と捉え、町内事業者の皆様と協力しながら返礼品の開発やPRに取り組んでまいります。

 また、岩美町商工会が中心となり、岩美駅周辺の賑わいづくりについて検討が進められています。岩美駅舎の利活用も含めて、関係機関、町民の皆様のご意見を伺いながら協働で岩美駅周辺の賑わいづくりを進めてまいりたいと考えます。


○医療・健康対策について

 岩美病院は、国の制度改正により、介護療養病床が国の制度改正により、介護療養病床が令和5年度で廃止となることから、医療療養病床に変更するとともに、圏域の人口減少を考慮し病床数を110床から99床へ削減して効率的な運営を目指すこととしております。本年3月に策定にする岩美病院経営強化プランに沿って、限られた医師・看護師等の医療資源を地域全体で最大限活用しながら、新興感染症の感染拡大時等の対応や経営の効率化に取り組みます。

 また、5月には岩美病院が現在の場所に移転して20年を迎えます。地域医療を担う公立病院として、町民の皆様が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを送ることができるよう、これまで以上に医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアの拠点機能を果たします。

 健康対策につきましては、「第4次岩美町健康づくり計画」の初年度であり、各年代に応じた健康づくりを進めます。健康づ健康づくり、健康管理には、自身の健康状態の把握が重要です。がんや生活習慣病の早期発見・早期治療のため、特定健診とがん検診の受診を推奨するとともに、岩美病院眼科で緑内障検診を新たに行います。高齢者の方の新型コロナウイルスワクチン接種が定期接種となり自己負担が必要となりますが、一部助成により負担を軽減します。また、近年、増加している帯状疱疹について、新たにワクチン接種の助成を行います。


○福祉について

障がい者福祉につきまして、新たに策定する障がい者計画等に沿ってサービスを提供するとともに、より円滑なサービスの提供に繋げるため、東部4町合同で基幹相談支援センターを新たに設置し、総合的な相談支援及び関係機関等との連携強化を図ります。

長引く物価高騰の影響を緩和するため生活困窮世帯等への光熱費助成を継続するとともに、複雑で多様化する実情に対し包括的な支援を行うため、引き続き岩美町社会福祉協議会と連携し、自立相談や就労準備、家計改善などの支援を一体的に実施します。

介護保険は、第9期介護保険事業計画の初年度となります。身近な地域で実施される高齢者の生きがい・健康づくりに向けた活動を支援し、介護予防・フレイル対策と生活習慣病等の疾病予防・重症化予防を一体的に進めるほか、認知症に関する相談会や講演会を開催し、早期発見に繋げます。

計画期間中には、団塊の世代が後期高齢者に到達する2025年を迎えます。高齢者を支える担い手不足が見込まれる2040年を見据え、高齢者福祉施策の推進、持続可能な介護保険制度の構築に計画的に取り組み、高齢者が住み慣れた地域で生活し続けられるよう、地域で支え合う体制づくりを進めます。


〇農業振興について

 担い手対策として、引き続き新規就農者や農業法人等内での新たな後継者の確保や新規雇用に対する支援、中間管理事業による農地の集積、集約化を行います。

 有害鳥獣対策につきましては、イノシシ、シカによる獣害は依然として深刻であり、捕獲奨励金の交付による捕獲促進や被害防止柵の設置支援などを継続して行います。

 また、捕獲頭数の増加に伴い、捕獲後の鳥獣処分が大きな負担となっている実情を踏まえ、捕獲したシカを町外のペットフード加工施設に運搬し処分する体制を整備し、捕獲者の労力軽減及び捕獲鳥獣の有効利用を図ります。


〇林業振興について

 担い手不足や、所有者が不明なことなどにより、町内の森林は適切な管理の継続が課題となっており、森林機能が十分に発揮されていない状況にあります。

 令和6年度から森林の整備や促進に関する事業の財源として森林環境税が導入されます。この財源を活用し、適切な森林管理に向け、危険木の事前伐採の支援や花粉発生源対策、皆伐再造林等の実施について林業経営体や関係機関と連携し取り組んでまいります。


〇水産業振興について

 漁業者の高齢化や担い手不足に加え、海水温の変化等による水産資源の減少など、本町の基幹産業である水産業を取り巻く環境は、依然として厳しい状況にあります。

 漁業就業者の確保対策として、新規就業者支援や漁船取得への支援など漁業者の負担軽減を図るとともに、漁船等のメンテナンス施設の整備補助を行うなど、漁業経営者の多様なニーズに応じた支援に取り組んでまいります。

 また、水産物の安定供給を図るため、養殖事業者が実施する安定的な生産体制構築に係る取組の支援や稚貝稚魚の放流、藻場の管理を継続的に行い、持続可能な水産業の振興に努めます。


○道路整備について

 岩美道路が全線開通し、周辺では宅地等の造成が行われており、今後の更なる定住促進や山陰海岸ジオパークエリアの連携や交流人口の増加に繋がることが期待されます。

 県道整備につきましては、網代港岩美停車場線における田後地内の橋梁新設工事や岩美停車場河崎線などの道路拡幅工事が継続して進められます。

 町道整備におきましては、落石の影響により一部区間を全面通行止めにしている町道陸上中央線の早期復旧に向けて、国の基幹道路の指定を受け、県の代行事業による実施を予定しております。また、黒谷橋ほか3橋の橋梁補修工事や町道横丁沖線の道路改良工事などを計画しており、引き続き安全で快適な道路環境の整備に取り組んでまいります。


○公共交通について

 公共交通は、学生や高齢者など運転免許を持たない方が安心して地域で暮らしていくために欠くことのできない移動手段であります。岩美町地域公共交通計画の取組を進め、町内の交通資源を活用しながら、持続可能な公共交通体系の構築を目指します。昨年10月に町営バスの運賃を100円とし、小田線の一部時間帯で予約運行便を開始しましたが、利用状況の分析や利用者の声を伺いながら、引き続き必要な見直しを行います。

 3月16日の町営バスのダイヤ改正において、更なる利便性の向上を図るため、牧谷にバス停留所を新設するとともに、買い物の時間を確保する運行ダイヤの見直しを行います。

 また、民間路線バスの利用に対する運賃助成や町内の学校や老人クラブのJRを利用した活動に対する助成を実施し、引き続き公共交通の利用促進に取り組んでまいります。


○上・下水道事業について

 上水道事業につきましては、町内の主要な配水管の耐震化を進めるため、国道178号浦富地内配水管耐震化事業に着手するほか、令和7年度の完成に向け老朽化している池谷浄水場の更新工事に着手します。

 下水道事業につきましては、各浄化センターやマンホールポンプの機械・電気設備の更新を進め、施設全体の保全や長寿命化を図ります。また、令和6年4月1日から地方公営企業法の財務規定等の適用を実施し、2つの特別会計を下水道事業会計として運営を行い、経営基盤の強化を図るとともに、持続的で安定した下水道経営を目指します。


○環境対策について

 2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を実現するためには、脱炭素社会の推進に向けて地域が一体となって取り組むことが必要です。

 温室効果ガスの排出量削減の推進を目的とした「地球温暖化対策実行計画」の策定を進めるとともに、脱炭素への意識を高め環境に配慮した行動に繋がるよう講演会等の啓発活動や地域・家庭における環境にやさしい再生可能エネルギーの導入を促進するため、家庭用太陽光発電設備や蓄電池の整備に対する支援を継続してまいります。


〇行財政運営について

町の公式ホームページでの音声読上げ機能の追加や多言語化の拡充、SNSによるプッシュ型での積極的な情報発信を行うとともに、引き続き各種手続きのオンライン化を進めてまいります。

 財政運営では、一般財源の確保に見通しが立ったものの、地方債に頼らざるを得ない財政構造となっております。補助制度の有効活用や費用対効果の更なる向上に努め、町の未来を担う子ども達に過度な負担を強いることがないよう、持続可能な行財政運営に取り組んでまいります。